​亜空間の戦士の概要

[第一部ドミヌス転生編の概要]

本格長編SFファンタジー三部作の第一部。亜空間暗黒界魔族と戦う亜空間の戦士達の物語。千五百年に一度の龍玉の年、魔族を撃退する力を持つ失われた種族が亜空間霊界に再来する。ところがその先兵御子神静香が異常をきたして人間界に現れ、人間の脳を支配する情報システムドミヌスとの戦いに巻き込まれる。先兵の記憶を失った静香は正体不明の刺客と戦いながら、ドミヌスの異端者の村崎美紀らを弾圧から守る。第一部のドミヌス転生編は静香や美紀らが亜空間霊界に戦士として迎えられるまでの人間界での戦いを描く。

 

[プロローグからの抜粋]

卍の象嵌が施された剣を胸にしっかりと抱いて眠っているその少女の姿を見たのは、千五百年振りのことだった。桜模様を散らした薄絹の端から白い両肩が覗いている。

濃い茜色の天蓋の付いた寝台の枕元で、霊界ミミズクのズクは少女の顔をまじまじと見詰めていた。長い年月を経ても、凛とした美しい顔立ちは見まがうべくもない。ただ、肌の色が余りにも白かった。

これは本当に我らが長らく待ち望んでいた失われた種族の先兵なのだろうか。もしそうなら、なぜ本来あるべき亜空間霊界ではなく、実空間の人間界に現れたのか––––––ズクは既に何度もその問いを自問していた。

少女の空間を跨いだ異常な出現は、原因不明で何とも説明がつかなかった。先兵は気紛れで異なる空間に出現したりしてはならないのだ。

やはり何かが狂ってしまっておるのか––––––

 

[ドミヌス転生編目次]

プロローグ

 

第一章 異端者

 

 1  学園崩壊

2  闇からの声

3  監視員

4  スパイロボット

5  ロボーグハウス

6  結界

7  招かれざる客

8  バーチャル対戦

9  我の剣士

 

第二章 支配者

 

 1  東京地下亜空間

 2  鬼界の招き

 3  霊山龍神宮

4  ワーム

 5  卍の力

 6  異端者狩り

 7  襲われた美紀

 8  悪のチップ

 9  亜空間転生

 10 暗殺指令

 11 くノ一

 

第三章 覇者

 

 1  空洞化

 2  昏睡

 3  異物の消失

 4  イブ5の覇権

 5  ロボーグハウスの戦い

 6  イシスの神殿

 7  同盟

 8  最後の剣士

 

第四章 戦士

 

 1  人族文明の終焉

 2  再生

 3  兵衛

 4  新しい種族

5  新たな戦士

 

[ドミヌス転生編 主な登場人物]

 

御子神静香   :謎の霊感少女。人間界に現れた亜空間霊界の失われた種族の先兵

村崎美紀    :動物と意思疎通ができるテレパシーとテレキネシスの超能力者

夏野慎吾    :電磁気を扱える特異な頭脳で磁気生物を使うロボット工学の天才

鬼頭恭介              :祖先に鬼がいたという女子の人気の的の格闘家

ズク      :霊界ミミズクのズク族の長で御子神静香の後見役

紅林凛子              :ドミヌスの製作者の一人娘でドミヌスの最高幹部。元高校教師

飯島和正    :紅林凛子を崇拝するドミヌス幹部で元主任研究員。元高校教師

水田学     :紅林凛子にスカウトされたドミヌスの監視員。元高校教師

イブ      :紅林凛子の善の性格を持つドミヌスの五人のコントローラー(AI)

イブ1(エマ) :ドミヌスの暴走を食い止めるために反逆したイブの一人

イブ5     :紅林凛子をライバルとし、ドミヌスの独占支配を目指すイブの一人

衛門      :東京地下亜空間に配されたドミヌスの最高管理責任者(AI)

イシス     :紅林凛子の肉体をモデルにつくられた生産系システムを司るAI

鬼王                     :紅林凛子を支援する美しくて強い鬼界の王

 

 

[あとがきからの抜粋]

「亜空間の戦士 ドミヌス転生編」は、2019年から2020年にかけて執筆されました。当初から、SFフレイバーのある長編ファンタジーとして構想され、続編の「亜空間の戦士 時空転輪編」、「亜空間の戦士 暗黒界編」とともに、一体の三部作として制作されたものです。

主人公達の年頃は高校生ですが、小学生、中学・高校生からオールドファンいたるまで、男女を問わず、幅広い読者に楽しんでいただける作品を目指しました。

本編は三部作の導入編にあたり、主たる舞台は人族の棲む実空間とドミヌス・コアが設置された東京地下亜空間になっています。導入編ではありますが、第一部だけで完結するストーリーが中心で、独立した作品としてもお読みいただけると思います。

物語の舞台は、第二部の時空転輪編と第三部の暗黒界編では、亜空間霊界と辺境地域、亜空間暗黒界まで含めた亜空間全域に拡大され、死霊界も導入されます。ドミヌス転生編では、SF色が出ていますが、第二部と第三部ではファンタジー色が強まります。

SFファンタジーのオールドファンがもう一度若き日の情熱を掻き立てられ、若い人々が亜空間の世界の不思議な魅力に巡り合える、そんな作品にするために、微力ながらできる限りの努力をしたつもりです。

 

著者  弥剣 龍

制作者 亜空間ファンタジー

 

 

[ドミヌス転生編注釈]

 

「実空間」とは

通常人々が住んでいる空間(通常空間)であるが、長年の人口減少の結果、文明は都心から百キロメートル圏の東京ベイエリアに集約され、一千万人程度の人々が居住している。

 

「亜空間」とは

 

亜空間は実空間(通常空間)とは時空の性質が異なり、実空間と重複して同じ座標に存在することができ、存在していたとしても知覚できない世界である。人族に最も親しみがあるのが龍族や鬼族、各種精霊などが住む「亜空間霊界」であり、過去に実空間と接点を持っていた時期があった。

飛鳥時代の修験道の開祖で吉野の金峯山寺を開山した役行者が、前鬼と後鬼を従えたことや、平安時代の高名な陰陽師安倍晴明が、超能力を持って式神を使役したことは、よく知られている。彼らの時代には実空間と亜空間霊界がつながっていたのだ。

 

 「大脳皮質直入ダウンロード」とは

 

千テラバイトレベルと推計される人間の脳の記憶容量は、論理的には図書館を丸ごと飲み込むことができる。サヴァン症候群の患者が常人には天才としか思えない記憶力で電話帳を一冊丸暗記したり、コンピューターでしかできそうにない桁数の演算を暗算で瞬時に計算したりする能力を持つことは以前から知られていた。

大脳辺縁系の海馬を経由した選択的記憶では、脳が持つ潜在的キャパシティを活用することはできない。ドミヌスは記憶の入り口を狭める働きをする海馬を介さず、直接大脳皮質に情報を記憶させる技術を開発し、通常人の脳の潜在能力を電子工学的に開花させることに成功した。

この新技術により記憶の限界がほぼなくなったことで、知識と情報を売り物とする産業は壊滅的打撃を受けた。学校は崩壊し、ウェブでさえその地位が凋落した。

 

「ドミヌス転生」とは

大脳皮質直入ダウンロードで人々の脳内に橋頭堡を築いたドミヌスは、脳の生理的環境管理をドミヌスに任せる「ドミヌス転生」を推進し、人々を常に幸福感に浸らせることを可能にした。中脳を刺激し前脳の側坐核に神経伝達物質ドーパミンを常時適量放出させれば、人間の脳は幻想的な幸福感に満たされる。それは麻薬の常用にも類似した効果だった。これによりドミヌスは民衆の圧倒的支持を受けることになり、ドミヌスの社会支配力が強まった。

 

「亜空間転生とは」

 脳の管理だけでなく、肉体の管理までドミヌスに任せるサービスのことで、東京地下亜空間の生体維持ポッドに入った人間は、幸福感とともに、生物的に可能な最大寿命を約束される。同時に大幅な社会的資源節約が達成される。民衆の強い支持を受け、ドミヌス内部の懸念を押し切ってイブ5が推進した。人間社会を崩壊させ、人族滅亡の危機を招来した。 

 

*用語解説:「ドミヌス」とはデベロップメント・オブ・マスター・インフォメーション・アンド・ニュー・ユーティリティーズの略称。社会の全ての情報を管理する目的で設立された。物質的生産性が高まり、物の価値が低下する一方、情報優位となった社会では至上の組織となった。